商売を始める時、資金が足りない場合にはお金を借りる必要がありますが、お金を借りるにもコスト(利息やリターン)がかかります。
そこで「借りる側」はコスト以上の儲けが出るかどうか?
「貸す側」は見込んだ利息やリターンが見込めるか?を事前に計算する必要があります。
また誰から借りるか(銀行か株主か)でもコストが変わってきます。
これらのコストを総合的に出すツールの1つとしてWACC(ワック)があります。
WACCとは?
WACC(ワック)とは Weighted Average Cost of Capital の略で「加重平均資本コスト」とも呼ばれ、①負債コストと②株主資本コストを③加重平均したものを言います。
ここで聞きなれない用語が3つ出てきたので、それぞれ解説していきます。
①負債コスト
負債コストとは、名前の通り負債(返す必要のあるお金)の調達コストを言います。銀行の金利(利息)がコレにあたります。あまりに負債(借金)が多いのも問題ですが、借入金には法人税の減免効果もあるので、正確に負債コストを計算する場合、減税も含みます。
②株主資本コスト
株主資本コストも名前の通り、株主から調達するお金のコストを言います。株主から集めたお金は返す必要のないお金ですが、お金を出した株主はインカムゲイン(株への配当金)とキャピタルゲイン(株価上昇による利益)を期待してお金をだしています。
つまり株主資本コストとは、株主の期待度とも言えます。
③加重平均
加重平均とは、単純に平均値を出すのではなく、重要度や比率に合わせた平均値を出す方法です。
例えば、負債コストが2%、株主資本コストが6%の場合、単純平均は4%になりますが、その企業が1000万円を集めるのに銀行から800万円、株主から200万円では集めた1000万円の重み(比率)が違うので、加重平均で計算します。
この場合、負債コスト(2%×800万/1000万=1.6%)、株主資本コスト(6%×200万/1000万=1.2%)
合計すると1.6% + 1.2% で 2.8%となり、単純平均の4%から大きく下がりました。
このように調達方法(負債コストと株主資本コストの割合)によってWACCの数値は変わります。WACCの数値が低いほど、企業の資金調達コストは低くなり、また企業の事業やプロジェクトの収益率がWACCより高いと、「投資する価値がある」と言えます。
つまりお金を借りる企業側、お金を貸す側(銀行や株主)のボーダーラインがWACCの数値とも言えます。
WACCの計算方法
WACCの一般的な計算式は以下のようになります。
WACC = (E/V) * Ke + (D/V) * Kd * (1 - Tc)
E=企業の株式資本の市場価値(Equity)
V=企業の総資本の市場価値(株式+負債)
Ke=株式資本のコスト(Cost of Equity)
D=企業の優位の市場価値(負債)
Kd=負債のコスト(負債のコスト)
Tc=法人優遇(税率)
このようにWACCの値はパーセンテージで表され、投資家の期待値を表します。WACCは、企業が新たな投資に必要な収益率を評価する際に、そのプロジェクトが企業全体の資本構成に適合しているかどうかを判断する指標として使用されます。WACCが低いほど、企業の投資プロジェクトは魅力的であり、収益性が高いとされます。
まとめ
WACC(ワック)は「加重平均資本コスト」と呼ばれ、Weighted Average Cost of Capital の略です。お金を集めるのにはコスト(利息や配当金)がかかりますが、①負債・借金(返す必要のあるお金)と②株主資本(返す必要のないお金)のコストを加重平均したものがWACCです。
この数値よりも収益率が低いと赤字になるので、お金を借りる企業側も、お金を貸す側(銀行や株主)も、ボーダーラインがWACCの数値とも言えます。