ビジネスの現場で「マーケットイン」「プロダクトアウト」というコトバをよく聞きますが、なんとなく「マーケット(市場)から」とか「プロダクト(製品)から」的な感じはしますが、この記事では両者の違いやメリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。
「マーケットイン」「プロダクトアウト」とは?
「マーケットイン」と「プロダクトアウト」はマーケティング手法です。製品を開発・生産・販売をするための「やり方」「考え方」「発想方法」です。
例えば年に一度の誕生日プレゼント。ここで「自分が良いと思うモノを送る」か、「好みを調べて相手が欲しいモノを送る」か、考え方の違いでプレゼントの内容も違ってきます。
どちらが良いという訳ではなく、「絶対に失敗が許されない」場合や、「スベっても良いのでインパクト重視」など、状況に合わせて戦略を決めるのは、ビジネス世界でも同じです。
●マーケットイン
市場調査から出た顧客ニーズを元に、商品やサービスを開発・提供する考え方。
●プロダクトアウト
自社の理念・アイデア・技術を元に、商品やサービズを開発・提供する考え方。
つまりマーケットインは「外向きな視点」から、プロダクトアウトは「内向きな視点から」と言えます。
それでは具体例と一緒に解説します。
マーケットイン
「マーケットイン」は、文字通り市場調査から入り、調査結果を元に顧客ニーズを分析してビジネス展開するマーケティング手法です。
調査からニーズ分析するので、確実性やリスク低減がメリットですが、画期的で斬新な製品が生まれにくいと言えます。
メリット
徹底的な市場調査で、ターゲット・年齢層・性別傾向など数値化でき、商品特長やターゲットが絞りやすく、低リスクで開発が進めれる。
デメリット
斬新で画期的な製品が生まれにくい。顧客自身が自分のニーズを正確に把握していない場合がある。
マーケットインの成功例:アサヒ飲料「ワンダ・モーニングショット」
市場調査から、多くのビジネスマンが朝食を会社の自席で取っていることがわかった。
→家でゆっくり本格的コーヒーより、忙しい朝にネットやメールをしながら片手間で手軽に飲めるコーヒーにニーズがなるのでは?
→「朝のスイッチをオンにする、朝専用の缶コーヒー」というコピーで大ヒット商品に。
このようにマーケットインでは「調査から顧客ニーズを導き出す」ことで開発のヒントをつかみますが、なんでも聞けば売れるわけではありません。
なぜなら顧客自身「本当のニーズに気づいていない」場合もあるからです。
マーケットインの失敗例:日本のスマホ
本来スマートフォンは日本企業が一番得意とする製品ジャンルでしたが、スマホの調査から「打ちにくい・使いにくい・値段が高すぎる」との結果から、ガラケー(ガラパゴス携帯)開発を続けてしまい、世界的にもスマホ開発に乗り遅れてしまいました(日本の全ての企業という訳ではありませんが)。
つまりマーケットインからは「iPhone」のような革新的な製品が生まれにくいといえます。それではブロダクトアウトはどうでしょうか?
プロダクトアウト
プロダクトアウトは自社の技術や、世に広めたい理念やサービスを元にビジネス展開するマーケティング手法です。
自社独自のアイデア・技術・オリジナリティが元なので独創的で差別化しやすい反面、不確実性でリスクも高くなります。
プロダクトアウトの成功例:アップル「iPhone」
携帯電話はボタン操作が常識の時代から「タッチスクリーン」の時代に変革した画期的な商品です。 スティーブ・ジョブズ の狂気なまでのこだわりを、シンプルで美しいフォルムに詰め込んだiPhoneは、プロダクトアウトの代表的な製品です。もしスティーブ・ジョブズが市場調査の意見を聞き入れていたら、iPhoneは誕生していなかったでしょう。
メリット
自社の理念やアイデア、得意技術からスタートするので、競合他社と差別化でき、企業ブランドにも効果的。
市場調査では出てこない画期的な商品が生まれる可能性がある。
業界の先駆者になるので、ブルーオーシャン(独占的市場)を生み出せ、競合他社に対し優位になる。
デメリット
市場ニーズのない、顧客が求めていない商品を作るリスクがある。
企業側、開発側の発想が元なので、かならずしも顧客のニーズに合わないケースがある。
プロダクトアウトの失敗例:3Dテレビ
2010年頃に登場した3Dテレビですが、専用メガネが必要だったり、3D酔いがある点がユーザー不評につながり、普及しませんでした。
背景として、液晶テレビが差別化しにくくなり、また価格が下がり始めた為、何か付加価値を付けないと・・・と3Dが付与されましたが、結果的にはメーカーがただ売りたいだけの商品になってしまいました。
「iPhone」も「液晶テレビ」も発売当初は画期的商品として新しい市場を作り出しますが、年月と共にコモディティ化が進み、差別化しにくくなるので、どうしてもスペックや機能を重視する傾向になりますが、必ずしも顧客ニーズに合うとは限らず、ニーズ」から外れてしまう場合もあります。
まとめ どっちがいいの?
一番のポイントは、どちらも「世の需要に合う」のがポイントになります。
マーケットインは「 市場調査から出た顧客ニーズを元に」、 プロダクトアウトは「 自社の理念・アイデア・技術を元に」で、スタートは違えども目標は同じ「世の需要に合う」商品やサービスを生み出すことが目標です。また、どちらもメリット・デメリットがあるので、外部環境や自社の状況、業界やジャンルに合わせて使い分けが必要です。