「あたらしく事業を始めたいが、何から手をつけたらよいのか分からない・・・」いきなり用紙に描きはじめるのはムリがあります。やることがハッキリ決まっていない、頭がこんがらがっている時にピッタリなのがフレームワーク(型)です。人間は空白があると埋めたくなる習性があるので、事業選定には「マーケティングプロセス」というフレームワークが効果的です。
この記事では「マーケティングプロセス」の中でもフィリップ・コトラー(近代マーケティングの父と呼ばれるアメリカの経営学者)が提唱した「R・STP・MM・I・C」をベースに解説していきます。
プロセスはR・STP・MM・I・C
マーケティングの流れは「①戦略を立て→②戦術を実践する」ですが、分解すると5つのプロセスになります。この5つの英字頭文字が「R→STP→MM→I→C」で、日本語に訳すと
「調査→STP分析→4P分析→実習→管理」になります。
Research(市場調査)自社内や競合他社など環境分析をマクロ・ミクロ視点で調査する。
STP(STP分析)市場を細分化し、ターゲットを絞り込み、他社との差別化を明確にする。
MM(マーケティングミックス)価格、販売する場所、販売方法、広告宣伝の戦術を練る。
Implementation(実施)KPI(目標設定)を設定して実施する。
Control(管理)KPIと実績を比較・解析し、見直しや改善など目標実現に向けたフォローを行う。
このプロセスであれば「誰に、何を、どこで、いくらで、どのように」がキレイに整理でき、最適解を選びやすくなります。
つまり自社にとって一番よい選択をするための道具が「マーケティングプロセス」と「フレームワーク(型枠)」です。
それでは各プロセスの詳細をご紹介します。
Research(市場調査)
自社内や競合他社など環境分析をマクロ(鳥の目)とミクロ(虫の目)の視点から調査します。上空からは広く遠く見れますが、足元も細かく見ないとスグ転んでしまうので、2つの視点が必要になります。
マクロ環境分析(PEST分析)
まずは大きく世の中の流れや中長期の視点で調査しますが、マクロ環境分析で一番有名なのがPEST分析というフレームワークです。
(PEST=Politics、Economy、Society、Technologyの4つの頭文字)
Politics(政治)=政府方針や法規制など政治的な視点
Economy(経済)=GDP・人口増減・生産量の推移など経済的な視点
Society(社会)=人口・文化・流行など社会的な視点
Technology(技術)=新技術・特許など技術的な視点
以上の切り口から、中長期視点に大きなトレンドを掴むフレームワークになります。
ミクロ環境分析(5フォース分析など)
今度は参入しようとしている「業界の今」の現状を把握します。フレームワークは「5フォース分析」を使います。
フォースは「脅威」の意味で、自社の脅威を5つの面から分析し、業界(産業)内での立ち位置の把握や競合他社の状況、業界の収益構造などを明らかにする方法です。
①業界内の競合の脅威
②買い手の交渉力
③売り手の交渉力
④新規参入の脅威
⑤代替品の脅威
以上の面から、魅力ある業界か?参入余地は?どこが収益ポイントか?などの観点で業界全体の魅力度を図ります。
その他にもSWOT分析(自社の強み弱み)、PPM(自社の注力分野・撤退分野の明確化)、バリューチェーン分析(自社と他社の違い)など必要に応じたフレームワークを使ってミクロ環境分析を行います。
STP(STP分析)
STP分析は、自社が最も優位性を発揮できる市場を決めるためのフレームワークです。
(STP=セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの英頭文字)
顧客の年齢・性別・ライフスタイルなど市場やターゲットを細分化し、他社との差別化を明確化していきます。
Segmentation(セグメンテーション):市場や顧客の細分化
Targeting(ターゲティング):目標とする市場を決める
Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を決める
セグメンテーション(市場や顧客の細分化)
市場や顧客を細分化する際に、年齢や性別など人口に関する「人口動態変数」、ライフスタイルに関する「心理的変数」など4つの変数が使われます。
ターゲティング(目標とする市場を決める)
セグメンテーションで細分化した市場や顧客の中から、自社が狙うべき市場を決めることがターゲティングです。選定は今後の成長性など「魅力があるか?」、また「自社の強みが発揮できるか?」の視点で検討します。
ポジショニング(自社の立ち位置を決める)
ターゲティングで決めた目的の市場・顧客に対し、競合他社と自社とナニが違うのか、立ち位置や優位性など差別化ポイントを、明確に顧客に伝える必要があります。ポジショニングマップという表を作成して可視化します。
以上の分析により、市場全体を把握し、競合他社との関係も含めてその中で自社がどの立ち位置がベストか、をその中でドコを狙うべきか決め、決定していきます。
つまりSTPとは「自社の強みを発揮(ポジショニング)できるように市場をセグメントし、ターゲティングすること」です。
セグメンテーション(市場の細分化)で、「どんなユーザーがどんな市場に存在するか」が整理され、顧客のペルソナ設定もイメージしやすくなり、どのような立ち位置からアピールするか?というプロモーション戦略の土台にもなります。
また競合を把握した自社の独自性ある立ち位置を設定することで、大手や海外からの明確にすることして位置取りができます。STP分析を行えば、わかりやすく言語化された戦略をメンバー全員に浸透させやすくなります。
MM(マーケティングミックス)(4P分析)
マーケティングミックスは4P分析とも言われ、製品、価格、売る場所、広告の4つを多面的に分析するマーケティングの基本ともいえるフレームワークです。
(4つのP、プロダクト、プライス、プレイス、プロモーションの英頭文字)
Product(プロダクト)製品はユーザーニーズを満たせるか?
Price(プライス)製品の価格は適正か?
Place(プレイス)販売する場所、販売方法は適正か?
Promotion(プロモーション)ユーザーにどう伝えるか?
以上が「4P」すが、似た用語で「4C」もあります。「4P」が企業側の視点に対して、「4C」今度は顧客側の視点です。
Customer value(顧客にとっての価値)
Customer cost(顧客の負担)
Convenience(顧客の利便性)
Communication(コミュニケーション)
コトバ単語は違いますが、内容はつながっており、どちらも「より売れる」ためのフレームワークです。
「4P」は自然に企業的な視点になりがちなので、「4C」の顧客目線を配慮したミックス分析が最適といえます。
Implementation(実施)
マーケティングミックス(4P)が決まったら、今度は具体的な実施(Implementation)です。
ポジショニングや4Pが決まっても、コトバが決まっただけなので、より具体的な行動計画にするためにKPI(Key Performance Indicator)を設定して、目標値に向けた戦術を練って実施していきます。。
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KPIとKGIの違い
Control(管理)
製品は「作って販売できたら終わり」ではありません。マーケティングで分析して計画されたモノはあくまでも計画です。KPIで数値化した目標と実績を分析し、早々に見直して改善や軌道修正などのPDCAサイクルが重要になります。分析し改善していくためにも数値化し管理するのが、マーケティングのキモであり、縦横なポイントになります。
まとめ
「マーケティングプロセス」は英文字が並んでると難しそうに見えますが、ただのフロー(流れ)であり、型(フレームワーク)です。浮かんでは消える頭の中の情報をスッキリ整理できますし、最適な道しるべを的確に短時間で決断できます。
実際には多くの企業で既に自社内容のマーケティングプロセスがあると思いますが、大まかな基本的な流れ、代表的なフレームワーク(流れ)を知っていれば、かならずビジネスシーンで活躍するはずです。